「平和と安全を求める被爆者たちの会」 設立趣意書

【 平成22年5月制定 令和4年10月改正 】

世界で唯一、原子爆弾の攻撃を受けた私達は、世界が平和であることを強く希望しています。

 

原爆の犠牲者を弔い、そしてあの廃墟から黙々と街を復興させてきた人々に深く感謝します。

一方、今も癒えることのない被爆者の苦しみは充分に酌み取る必要があると思います。

原爆のもたらす惨状も、未来に向けて語り継ぐべき体験です。

 

しかし、今の現実から冷静に判断した時、「核廃絶」を唱えれば「核兵器のない平和な世界」に一層近づくのだ、との考え方には疑問があります。

 

私達は考えました。

広く、世界の現状を認識し迫る危機を察知して、これを乗り越えるためは現実的な行動をとらなければならないと。

悠久の歴史に育まれた我が国が辿ってきた道のりを、先人の労苦と智恵を、それを享受してきた今を生きる私達の在り様を見つめ、それを継続発展させる課題を明らかにしていくべきであると。

 

このような考えを広め、実行する活動をするため、私達は平成22年5月に「平和と安全を求める被爆者たちの会」を結成しました。

令和4年10月、私達は新たに改革した体制をもって活動を継続します。

 

今現在、世界各地で戦争や紛争があります。

ロシアはウクライナを侵略して「核兵器使用」の恫喝をしています。

我が国は北朝鮮や中国による核の威嚇への対応として、米国の「拡大抑止」を受け入れて平衡を保っています。

他方で、令和3年1月(2021年1月)に「核兵器禁止条約」が発効しましたが、核兵器保有国や日本、NATO諸国などは参加していません。

条約に加盟する諸国には、「他国に核兵器を禁止する権限」が無いからです。

 

一方で市民団体等が進めている「反核平和運動」は、我が国がこの条約に加盟するよう要求していますが、それは直ちに「拡大抑止」からの離脱、つまり「核の恫喝」や「軍事的圧力」から無防備になることを意味します。

この状態が「核兵器のない平和な世界」と、どう繋がるのでしょうか?

 

私達が発するこのような“疑問と危機感”の表明は、先鋭的な反核活動から阻まれ、現実を踏まえで議論すること自体が排除されて来ました。

広島市当局は、我が国の安全保障問題には決して踏み込みません。

本当に平和を実現するためには、あらゆる可能性について議論するための知識と、様々な角度から検討する自由が絶対に必要です。

 

被爆地を理由にして、端から結論を固定し議論することさえタブーとする所に平和も発展もないと考えます。

 

この会は、現実的で前向きなタブー無き議論を展開します。

国際社会において「過ちを繰り返えさせない」ための方策を検討、発信します。

 

本会は、会員やその他の方々からの寄付金や賛同者の方々の奉仕活動などを基礎として運営されます。私たちの活動や考えに多くのご支持・ご支援が寄せられること願って止みません。